ふえてゆく灯に冬月の照りわたり   満田春日

暗くなり、家々のあかりがだんだん灯りはじめる街。
人間の灯した光を、さらに月光が照らしわたるという二重構造が面白い。
切れを避けた文体が、この包み込まれるような静かなあたたかさをより高めている。
人口が増え、灯がいくつにも増えていっても、月はただ一つ。
その清らかな孤独感が、なお月光を美しく感じさせる。

『雪月』(ふらんす堂、2005)より。