するどい村の喪家で人参食べている   西川徹郎

「するどい村」の冷たさと「喪家」の静けさの中に、
「人参」の赤い色がぼうっと浮かび上がり、
そしてその赤もやがて、食べられることによって失われ、
(きっと生の人参だ、ぽりぽりぽりぽり)
冷たく静かな時間に取り込まれていく。

『決定版 無灯艦隊―十代作品集』(沖積舎、2007)より。