はつふゆや切り取り線をゆく鋏   加藤かな文

言葉の軽やかさと、人の気配のきちんとする静けさ。
「はつふゆ」の寒さと、鋏の動く眩しさが響きあう。
実線ではない「切り取り線」の頼りない線を頼るしかない不安感をどこか香らせ、
それでも、その線をすいすいとゆく鋏のきっぱりとした冷たいかたちに、
過ぎゆく秋を見送り、冬を迎える心が定まっていくようだ。

『家』(ふらんす堂、2009)より。