グレープフルーツジュース氷もグレープフルーツジュース   榮猿丸

グレープフルーツジュースは略されにくい。
下手に略すとグレープジュースと紛らわしい。GFJも分かりにくい。
そして、略さずとも「グレープフルーツジュース」は、意外と、言いやすいのだろう。
グレープフルーツジュースの独特の酸味と重たさの中に、
氷を入れて、そして初めて「グレープフルーツジュース」の完成である。
この濃度の高さ(もちろん果汁100%と読みたい)に、
「グレープフルーツジュース」のリフレインは必然だ。
また、他のジュースにはないこのグレープフルーツジュース独特の密度の中で、
最初はそれにからめとられるように動く氷も、溶けて次第に自由になる。
氷にとって、自分色に染めるとは、透明に、軽く薄く、することだ。
数多作られてきたさまざまな俳句たちの中で、この句自体がまた、氷のようであると思う。

「蛇腹」(朝日新聞夕刊「あるきだす言葉たち」、2011.5.10)より。
限られた紙面で、字数の多いこの句は、はみ出していて、目立っていた。

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