掃除機に鈴吸い込んで小春かな  能勢京子

「あ」と思ったときにはもう遅い。掃除機をかけていると、よくあることだ。金属は吸い込むときに高い音を出す。吸い込んだその一瞬に鈴が「りん」と鳴ったのだろう。掃除機が吸い込むのであればその鈴はとても小さいはずだ。取り出すか、あきらめるか一瞬躊躇するが、大概こういうときはあきらめるのだ。冬の乾燥した空気だからこそ、その音がやけに耳に残る気がする。

『銀の指輪』(青磁社 2005年)より