息吸へば吐かねばならぬ日向ぼこ 雪我狂流

漫画『ちはやふる』は競技かるたの話だ。主人公のチームが対戦しているとき、主人公が主将から「しっかり息を吐くことが大切」といわれたことを思い出し、それを実行し、おちつくというシーンがある。
息を吸うには確かに前回吸った息を吐いていることが前提だ。けれどそれは人間としてというか、生きているものとして当たり前のことであり、「吐かねばならぬ」と義務感に思うことなんて、普段ない。日向ぼこしているうちにふと、めんどくさいなと思ったのだろう。息を吸うのは構わないけど、吐くのはめんどくさいなーと、くだらないことを考えているその日向ぼこが、とても穏やかで温かそうで、その状態を思うとほほえましい。

「日向ぼこ」(週刊俳句248号)より。