人の死と蝌蚪の死と同じに見ゆる  矢口晃

はっとさせられる一句だ。命としては一緒のはずなのに、こういう句を見て、明らかに同じものとしていない自分を発見して、とまどう。そして、このとまどいをこの句は解消してはくれないのだ。同じに見ゆるとあることから、基本的には作者も同じものとしているわけではないだろう。そして、それを同じに見えるのはこのひと時であって、これからも同じものには見えないのだろう。蝌蚪のゆるくゆらめく泳ぐ姿がが魂のゆらめきとリンクして見えて、少しこわく、少し考えてしまう句である。

「蝌蚪は雲」(週刊俳句 248号)より。