蝶のごと生くるは難し火を使ふ   大木あまり

きっと、「蝶」のように生きてみたい、と思ったのだろう。よく考えてみると「難し」。
これは、夜の蝶、や、蝶よ花よと扱われる、などという慣用句としての蝶ではなく、
もちろん、本当の蝶の生活を思ったときの難しさ、大変さに思いが至ったのだ。
自由に生きるということは、頼ることも頼られることもないということだ。
下五の「火を使ふ」で、ぐっと人間の現実世界に引き戻し、
ゆらゆらと揺れる炎を見ながら、自分が自分であることを思っている。

「火を使ふ」(『俳句 3月号』角川学芸出版、2012)より。