空高く殺しわすれし春の鳥  澤好摩

空高く舞っている春の鳥、あれはわたしが殺し忘れたのだ、という奇想。死を逃れた命であるという見せ方でもって、春の鳥の爆発的な生命力を引き出している。凶器となるべき両腕を重たくぶらさげて、地に立つ私は、ぽっかりと、春の空を仰いでいるだろう。

『現代俳句文庫 澤好摩句集』(ふらんす堂、2009年1月)より。