翌日しらぬ身の楽しみや花に酒   井上井月

「翌日」は「あす」と読む。
もちろん、明日のことなど誰も分からないのだが、
井上井月という俳人の生涯を思うと「翌日しらぬ身」という言葉の重みが少し変わってくる。
この諦めからくる「楽しみ」のかなしさ。「花に酒」の明るさが、なお悲しい。
井月の句は祝いの言葉としての句であり、井月はそれを人に書き、酒や食べ物を恵んでもらっていた。
そしてまた、この句も、句集や雑誌等の紙媒体、ネット上のものから引用したのではなく、
映画の中でほとんどセリフのように配置されていたものの一句である。
ただ読むことだけが俳句を受け取ることではない、ということを考えさせられる。

映画「ほかいびと」より。ポレポレ東中野で4月13日まで公開。