一つ家にひとりで咲いて散る桜   山本洋子

どんな花も、咲いては散る運命にあるにもかかわらず、
古くから桜ばかり詠まれ惜しまれるのは、高くから人間に降り注ぐように散るからだろう。
知らないうちにひっそりと散り朽ちるのではないから、人間の意識に刻まれやすい。
掲句の「桜」は、きっと住んでいる人のことにも重ねているのだろうが、
単純に「ひとり」と呼びたいほどに「桜」を思っているという風に読みたい。
どこにも行けずただひとりで咲いて散る桜の美しさと、それを誰にも侵されない静けさを感じる。

『桜』(角川書店、2007)より。