ロープ張るだけの閉店苗木市   杉山洋子

普通の店のように、扉や門を閉めるのではなく、商品を片付けてしまうのでもなく、
申し訳程度にロープが張られている苗木市。風に吹かれてロープが少し揺れているかもしれない。
ロープの向こうには、さっきまで売られていた、木や花が見える。
開店中の雰囲気をそのままに、このロープ一本が、人を拒絶しているのだ。
クールな文体も面白く、ベタベタしたさみしさのない、風通しの良い一句。

藤田湘子著『男の俳句、女の俳句』(角川書店、1999)より。