今日は今日の春を惜しまむ命あり  山上樹実雄

命が毎日更新されていくような感覚に襲われる。今日の命は昨日のものとは少し違って、春を惜しまない。もしかしたら明日になってみるとやっぱり春の日々が過ぎるのを惜しく思う命があるのかもしれない。冷静に今日の自分がどう思っているかをとらえることで、今日の自分や昨日までの自分の気持ちを誠実に大切にしているように思える。

句集『四時抄』(花神社 平成14年)より。