夏座敷招かれたかどうか不安   野口る理

 清められた広い夏座敷に通された。湯茶の準備に奧へ下がった人にのこされて、一人きりでしばらく待っている時間であろう。
 開け放たれた庭から風が吹き入ってくる。緑の葉はしたたるように輝く。そういう空間を見るうちに、ふと、たった今まで確かに連続していた時間が途切れた。確かに招かれてやってきたのだが、はたしてそうだったか……。
 統覚のふとゆらぐこの感覚には敷居を隔てた内界と外界の景物が必要で、そういう意味で締め切った「冬座敷」では成り立たない句だろう。「夏座敷」に納得する。

「眠くなる」(『俳コレ』邑書林、2011)より。