はつ夏の大学前の製本屋  佐川盟子

大学の近くには、たいてい製本屋がある。いちばん忙しいのは、論文提出時期の12~1月ごろ。だから「はつ夏」の製本屋には、ひっそりと静かな時間が流れているだろう。大学の緑のまぶしさに相対して、製本屋の小さなくらがりが、涼しげである。

「週刊俳句」第267号(2012年6月3日)作品10句「Tシャツ」より。

表題句「Tシャツを脱ぎTシャツを着て眠る」にも惹かれたが、「同じTシャツなのに、着替えるのが面白いでしょ?」という意味が目立つところがすこし気になったので、掲出句のほうを挙げた。眠る前のすらすらっとした時間が捉えられそうな、句のスタイルは好きなんだけど。