ごはんつぶつけて寝る人夏の雨  吉田成子

「寝る人」だから、子どもではなく、成人。「寝る人」は家族、もっといえば夫や恋人といったパートナーだろう。ごはんつぶを口の端につけたまま、昼寝をしている人は、無防備でどこか憎めない。「バカだなあ」と思いながら、寝る人ごしに夏の雨の窓を見遣る。夏の雨が、しずかに世界をとじこめ、つなぎとめている。

第三句集『日永』(ふらんす堂・2012年5月)より。シンプルに整理された言葉が、なんでもないワンシーンを、象徴的な光景に押し上げている。ぜんたい、師・桂信子の俳句の呼吸法がいきづいている。挙げきれないので、冒頭からほんのいくつか。

赤ん坊に風の蝿取リボンかな
百日紅一臓失せしことはるか
ぎんなんを採りし袋か日当れる
白き鳥黒き鳥見て冬に入る
初夏や図鑑の鳥のみな細身
自然薯のどうでもよしところがりぬ
人日のテーブル掛に花や鳥
目薬のひとしづく寒明けにけり