氷菓舐め骨董市に紛れたる   横山香代子

「骨董市」というのは、ものもひともあふれているし、
皆、骨董品に夢中かつ慎重になっているので、割合すぐに紛れられそうだ。
「氷菓」を舐めることが、紛れるスイッチになっているような仕掛けが不思議で面白い。
実際、氷菓を舐めながら骨董を見ている人は少ないはずだが(店員はわりといたりする)、
ここでは人間は消えてしまい、あざやかな氷菓だけが骨董市の中をさまよっているような感覚になる。

『人』(文學の森、2007)より。