メーデーになんの予定もない予定 _(:3 )∠ )_   石原ユキオ

最後の「_(:3 )∠ )_」まで入れて、1句である。
これはいわゆる顔文字で、片腕を伸ばしてむにゃーっと寝そべっている人に見えるのではなかろうか。
縦書きにすると片腕を上げてきゅーっと立っている人に見え、
だらしなく寝そべっている横書きの場合とは違い、むしろ元気いっぱいのチアガールのようだ。
掲句は横書きで掲載されているため、ここでは寝そべっている脱力感を味わいたい。
「メーデー」とは5月1日に開かれる勤労者の祭典のことだが、そんなものとは無縁だという。
では、この作中主体は無職かというとそうではなく、この句が収められている章は「事務員の章」なのだ。
つまり勤労者であるというアリバイがあってなお、「メーデー」とは無縁なのだ。
その気分としての「_(:3 )∠ )_」。もはや「メーデー」と発音したかっただけのような軽さ。
安易に現代性という言葉が使われがちだが、現代は作られるものだという思いも強くさせる一句。

作品タイトルは「憑依俳句集」で、
「事務員の章」の他には「腐女子の章」「家庭教師の章」「ショップ店員の章」「S嬢の章」がある。
それぞれの章ごとにコンセプトがあり、語彙や文体はもちろん、フォントや句の配置なども駆使し、
なりきりを超えた憑依を体現しようとしている。(石原ユキオの憑依俳句宣言

『guca紙』(2012.8)より。

gucaは太田ユリ、石原ユキオ、佐藤文香の3人による期間限定短詩系女子ユニット。
2年間の活動を経て、昨夜、解散した。(解散イベントの様子は、追ってアップします!)