秋口の蟻を殺せば酢の匂ひ 喜田進次

私ってつくづく虫の句が好きなんだなって思うのだけれど、やっぱり小さい頃に触れたものの実感とかがあるんだなと思う。蟻には酸味が少しあって、それをふと思い出した。せっせと働く蟻を殺す不道徳な感情。でもそれを罪とは思っていない。でも、酸っぱい匂いが鼻について、これ以上殺そうとは思わない。蟻独特の酸味は、少し辛いくらいで、ふとした瞬間に思い出してしまう。

句集『進次』(金雀枝舎 2012年)より。