凍てつくような季節。重ね着に重ね着をして、少し動きづらいけれどもあたたかだ。
このあたたかさは、うさぎのふかふかしたあたたかさに似通っている。
それを単純に、着ぶくれて兎のようだ、というのではなく、
そこを前提とし省略した上で、今、兎のようだから、「兎のかたち」になってみるのだ。
兎になってみるという曖昧なことではなく、兎のポーズをしてみるということによって、
あくまで自分は着ぶくれた人間であるという事実が残るところが面白い。
「椅子」(『季語別櫻井博道全句集』ふらんす堂、2009)より。