日の去れば月に干さるる茸かな   中西夕紀

太陽が出ているうちは、いわゆる普通の天日干しの茸。
夜になって今度は月光にも干されているという視点である。
太陽が沈めば終り、ではなく、常に何者かが見守っているという安心感。
「月に干さるる」という言葉の違和感が、月の光によりみずみずしさを与えている。
なにより、「茸」がふしぎと美味しそうなところが面白い。

「手を洗へ」(『都市 12月号』2012)より。