カップ麺の蓋に消しゴム乗せ春夜   喜多昭夫

もうお湯を注いだカップ麺の蓋を押さえておく重石としての「消しゴム」。
「春夜」ということから、これから夜食を食べようというところだろうか。
手近なものとしての「消しゴム」に、ご飯を食べるのも書き物をするのも同じ机であることが分かる。
ほうっておくと丸まってくるカップ麺の薄い蓋の質感や、小さな消しゴムが、なぜか春らしい。
無理に感動させようとしない、あっさりとした親しさのある一句。

『花谺』(2012)より。