アワアワあわのせいほかな 第三話「ドヤ顔で除夜」

(『阿波野青畝全句集』花神社、1999)

『除夜』を読む


「ねぇねぇ、きりんさん、きりんさん。」

 

なんでぇ、猫撫で声なんか出しやがって。

 

「スピカの原稿で一番考えてるとこってどこ?」

 

え・・・、タイトルだよ。

 

「えっ・・・、アレで」

 

はい、三回目の阿波野青畝ですよ、ほらっ、まだまだあるんだから、嫌な顔しない、面白いからっ。休日に朝から書いてんだからっ。

 

『除夜』は第9句集、1986年刊行なので僕3歳、青畝翁は米寿です、つくづく青畝って最近まで生きてたんだなぁと不思議な感動があります。よしっ、読むぞー、面白い俳句、出てコイヤー!

 

 

妹の目も我が目も歌留多撫でゆけり

 

撫でるが優しい。この時青畝84歳、そう思うとこの目はますます優しい

 

 

多喜二の死昔の人となりにけり

 

人とは言っているけど、時代そのものを詠んでますね

 

 

蜆屋の別の桶には烏貝

 

別の、という言い方が静かに面白い

 

 

電卓の早わざにゆれ桜草

 

アタタタタっ!電卓を詠んでも楽しい青畝翁

 

 

子分跳び親分跳ばず蟇

 

可愛いようだけど、よく考えたら蟇なので、デカイよ

 

 

冷たき手冷たからぬ手脱ヤング

 

ギャランドゥ

 

 

ぼんぼんとおでんのゆげに時計更け

 

眼鏡が曇ってしまうあたたかなおでんやさん。

 

 

売れのこり更に明日待つ海鼠かな

 

どうにもならん

 

 

白魚や滴と落ちて膝の上

 

ぽてり、という感じがよく出てますね。

 

 

白酒をのの字にのの字重ね注ぐ

 

白酒によって不思議な清らかさが出てますね

 

 

涅槃図の裏にがらくたみな仏具

 

見ちゃ駄目!

 

 

トルソーに春愁なくもなかりけり

 

きりんにも悲しい事がなくもない、みたいな。

 

 

梅雨菌大団結をもくろめり

 

これは有名な句ですね、大げさに言う事で、モンスターみたいに感じる面白さがあります。

 

 

土壌わしづかみの草を引きにけり

 

男前

 

 

吾を捕ふごとく鹿垣四囲に張る

 

逃げてー!って、まさかね。

 

 

減る腹に入れる蟹寿司冬の旅

 

空きっ腹に蟹寿司、どの辺りを旅してるんだろ、と想像するのが楽しい一句

 

 

近江とは観音どころ神無月

 

そんな風に言われると行きたくなりますね。

 

 

鮟鱇の涎出すぎてすべりけり

 

どうにも止まらない、ほんと青畝の鮟鱇は面白い

 

 

手袋や運命線も何も無し

 

だって、手袋だもん

 

 

命ありけり能無しの生身魂

 

病閑吟の一句、命が何より一番大事、祈るような句

 

 

煮凝つてゐるぞと箸を弾きける


ぷるんとしてます

 

 

紅梅に洗濯の紐ぶらさがる

 

のどかで、贅沢、幸せってこんな感じかなぁ、・・・僕にはまだ遠いぜ

 

 

シャガール死す朧の星を乱すなと


シャガールもまた最近の人なんですよね、青畝にはルオーを読んだ句もあって、優しい絵が好きだったんでしょうね、僕も両方好き。

 

 

世界一花市場なりチューリップ

 

前書きはアムステルダム。虚子もそうだけど、腕さえあれば外国でだって素晴らしい俳句は作れるんです、ただ僕にはパスポートが無いだけなんです。

 

 

草笛の弟と姉七つの差


草笛がなんだか泣けます、七つの違いが優しくて世話好きな姉を想像させます。

 

 

黒き玉出てでで虫の目となりぬ

 

見すぎっ!

 

 

応と目をひらき再び昼寝しぬ

 

結局起きないのね

 

 

はたかれてあほらしき負力士かな

 

もう散々

 

 

一刀のもと香を放つ初りんご


初りんごって美味しそう、初林檎よりここは初りんご

 

 

猿の児がなぜ曳きずるか鴉瓜


さぁ・・・。

 

 

『除夜』は三年間で作られた俳句をまとめたものですが、実に充実してます、この間に、重信、草田男、立子等が次々と亡くなり、青畝自身も入院をしたりと、激動の時代ですが、青畝の句集にはそれでもあちらこちらに楽しい句が散らばっています。

休日に一人読むなら僕は楽しい俳句が読みたいもんです、あ、今日もまだ誰とも会話してないや。

 

じゃあまた次回!

 

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