2015.4.30 書肆山田刊行 冬野虹作品集成 第1巻より
お金の話でなんですが、今もお給料は手渡しでいただいています。茶色の封筒に入った状態で。
ありがとうございまーす、と両手でハハァーと頂戴して、だいたい五秒後ぐらいですかね、同じ職場のA子にお疲れ様でございましたぁ、とか何とか言って封筒ごと渡しています。
頻繁にお金ちょうだいとかこれ買ってとかA子に言うわけですが、僕が極悪非道なわけではなくて、お金を全部渡してしまっているので手持ちが無いのです。
そんな生活に慣れてくると、いつも財布には数百円ぐらいしか入っていないんですが、全然平気です。ジュースやお菓子も買ってもらったりしてますが、全然平気です。
僕が持っていると、不思議なことにお金はスーッと無くなっていきます。
本と酒しか買わないのに、なんでだろ…。
冬野虹さんの続きをやります。
冬麗のキャベツ畑に居る神主
何をしているんだろと思うけど、やはり何もしていない方が良い。
日輪はすそ野にじつとはるのゆめ
日輪が小さく、愛しく。
氷踏むまりこさんの荷は七つ
鞠だけに。まりこさんが魅力的。
ゆがんでゆく椅子のうしろのけしのはな
ケシの花は色によって花言葉が異なるらしく、赤なのか白なのか。なぜだかバルテュスの絵を思い出したのは椅子のせいか。
水に澄むふたつのからだ羊追ふ
こっちとあっちで羊を追う。
姉死んで妹あける豆の缶
死んだ姉がすぐ近くに居るような、不思議な句。真昼の幽霊。
陽炎のあつまつてゆく靴の先
あぁこの辺にもやもやと。この陽炎は自分にしか見えない陽炎。
主は降りて花火の束をさしだせり
ま、花火でも。「さしだせり」の優しさが良い。
浮いてきて水蜜桃の重さかな
たぷん。
きつと居てくれる深夜のテニスコート
君と会うなら深夜のテニスコート。深夜が良い。
ながい草みぢかい草の春の夢
平穏な、決してこの世にはない世界。
自動ドアわなわなひらく雪予報
ね、雪だと言ったでしょう、雪よ。雪か雪空か、雪予報か。
仁和寺にみんな帰つて春の星
これも不思議な句。みんなが春の星になってしまったような句。
悪役のとんぼ模様の一張羅
悪は涼しく格好よく。
ぐちやぐちやの大オムレツの君やさし
男のオムレツ。大オムレツが優しい。
ねぢあやめ将棋に勝つて帰りけり
駒の音が涼しく気持ちよく。
われは押されて蜻蛉の翅の下
わ。世界は面白い。
かなぶんぶんロングスカートでゆくわ
邪魔するやつは蹴散らすわ。
陽炎の理髪店ああおぼえてゐる
ああ思い出してきてしまった。おぼえてゐると書くと不安定な不思議な感じがします。
雪空や打出の小槌ゆりおこす
雪よ来い、さらさらと来い。
『雪予報』と言う句集名がなんだかとてもしっくり来る句集です。紹介し切れなかった句にも良いのがたくさんありました。ぜひぜひ読んでみて下さい。
あ、ちなみにまだ続きますよ。
次回は『雪予報』以降の句。まだまだ不思議な句がたくさんあります。
じゃ
ばーい