2016.12.24邑書林刊行
中村安伸句集『虎の夜食』より。
体に悪いものはだいたい美味しい。カップラーメンやら安い駄菓子やら、実に美味しい。
時々それらが無性に食べたくなるのは、調子が悪くなると野菜が妙に美味しく感じることに似ているのかもしれない。
うまい棒やスイカバーが体に良いわけないけれどたまに食べたくなる。でも三十過ぎてうまい棒って美味しいよね、とか言ってると変な目で見られそうなので言わない。
スーパーをうろつくと色んなことを思います。
全然関係ないけれど、年末に出た中村安伸さんの句集『虎の夜食』が面白かったのでやります。
これはたぶん光をつくる春の遊び
神様も人も多分春が好き。
風薫る馬に乗つたりあるいたり
馬を撫でたり話かけたり。
卒業やバカはサリンで皆殺し
ドキっとした句。カタカナの威力がすごい。
はたらくのこはくて泣いた夏帽子
働き蟻の三割(だっけ?)は働かないという話が好きです。
馬は夏野を十五ページも走つたか
好きな句。名馬はページを超える。
飛行機の散らかつてゐる暑さかな
大きすぎるものが。「暑さ」もまだまだ新しい詠み方が出来るんだと驚きました。自分の中にない表現を人の句から学ぶと実に嬉しい。
そらをとぶ女の子たちにまもられ
出来れば女の子に見守られたい。
手をつなぐときに地獄が見えてゐた
冥途の飛脚。
京寒し金閣薪にくべてなほ
これも好きな句、一番好き。金閣が最も美しい時。金閣や銀閣は現物よりも文学の中での方が美しい。
大寒の鏡より出て鏡を拭く
一人で出来るもん。
ひとりだけ菌のやうに白く居り
時々毒をフワッと出す。
雛の日のキリンで見えぬものばかり
上段から食べられそうで怖い。
十万億土に秋の団扇がひとつきり
静かな場所がそこにある。
最近で最も面白かった句集の一つかなと、ぜひ読んで欲しいです。
じゃ
ばーい