さあどうする面白いぞ川柳 その6

東野大八著、田辺聖子監修・編集『川柳の群像』(集英社、2004)

『川柳の群像』を読む

ふわぁ~あ、おはモーニン(僕の会社で流行っている、たまにおはおはモーニンと言う事も)、麒麟には労働と無縁なイメージがありますが、働いてます、みんな僕が酒ばっかり飲んでると思ってるんでしょう?そりゃまぁ酒ばっかり飲んでるんですが、たまには会社に行くのです、吐き気と頭痛で顔を歪めながらも行くのですよ。きりんの部屋だってほとんど小田急線で書いてんだから。さて、僕の前に座っている白髪のサラリーマン、神経質な顔をしてなにやら難しげな本を読んでます、その横に20代のサラリーマン、ヨレヨレなスーツだなおい(そういうの好きよ)、でグースカピーピー寝てるんですが、白髪のサラリーマンの方にゆらありゆらりと傾いて行き、それを白髪のサラリーマンが肩で、もうほんとに嫌、という顔付きで押し返すんです、まぁ普通に考えるとこの若いサラリーマンが悪いんですが、屈折した麒麟は敢えてこの白髪のサラリーマンが気に入らない、朝からなんだその顔付きは、おはモーニン♪とか言ってみやがれと思うわけです、ちなみに僕も今吐きそうなので、なかなか凄い顔付きです、戦う男の顔付きであります。

さぁ何が言いたいかと言いますと、川柳でも読みなさいよと言う事ですよ(え、こう流れてくるの?)、僕は川柳は作らないけど、川柳を読むという事がだんだん楽しいと思ってきました、そして世の中には、良い川柳というものがある、それは確かにある(説明しろって言ったってしないからね)、んでもって僕達俳人はその辺りがかなりノータッチなわけです、それはほんとにもったいないよと

そんじゃ川柳6回目行ってみようか!

全市停電むかしはこんな星月夜     不二田一三夫(いさお)

なんだか今読むと計画停電のように思ってしまいます、ちなみに僕は車で道に迷って、富山の星の観測所まで一人で行った事があります、綺麗で、寂しかったなぁ。

笑つてるのは高座の二人だけ     不二田一三夫

タハハハハと笑おう

人生の傾斜へころげまいとする     不二田一三夫

いやもう僕、コロッコロ猛スピードで転がってます

意地だけで金もなければ夢もなし(遺作)     不二田一三夫

夢はあるぜ、というのもまた意地かも、それにしても金はない

天命におまけはなく線香の香     富士野鞍馬

おまけなんて言うから余計悲しい

木の裏に青き夢見る蝸牛     R.H.ブライス

あ、俳句でもお馴染みのブライス先生です、こんな立派な川柳を残していたんですね、あまり俳句の世界の人はブライス先生の川柳、ご存知ないのじゃないでしょうか?

おみくじが大吉と出ただけのこと     堀口塊人(かいじん)

それだけで、どんどん強きにいける男になりたいな、むちゃしなきゃ

ふるさとの自慢は雪が降るばかり     堀口塊人

そういうけれど故郷を思うと泣けるのでしょうね、僕は親不孝してるので年々実家へ近付く電車に乗ると胸が痛い、この調子だと40歳ぐらいで早くも故郷を思うと泣きますな

なんぼでもあるぞと滝の水は落ち     前田伍建

俳句には夜半の滝の句がありますが、川柳には伍建の句がある、どっちも良いね

うがいして吸った空気の味も秋     前田伍建

わかります、僕も秋の空気が一番好きです、うがいした後はなお美味しい、はず。

ある日フトみんな他人だなと思い     前田雀郎(じゃくろう)

寂しい事を言うなよ、と思いつつ、こういう瞬間ってあるな、とか思ったりもする。

菊を貰う菊より美しいひとに     丸山弓削平(ゆげへい)

小雪さんからいただきたい

こともなくけさもかきあげられた髪     三笠しづ子

悪女も嫌いじゃなくてよ、いや、やっぱり優しい子が良い

ひれ酒の酔ひ本当の事を言ひ     村田周魚

本当の事なんかね、言うもんじゃない、でも酔ってるからポロッとね。

偉い子はいぬがどの子も親思い     森紫苑荘(しおんそう)

こんな幸せに憧れはするけど、無理だなぁ

生きようか死なうか生きよう春朧     吉川雉子郎(きじろう)

ご存知、吉川英治先生ですよ、良い川柳たくさん残しているんです、僕は、なんやかんやで明日も生きて行こうと思える作品が好きです。

真ん中を歩く都の午前二時     吉川雉子郎

高知に住んでる頃酔っ払った僕は自転車で道路の真ん中をよく走っていたそうです、覚えてないけどね。

そうだったのか若き日の花言葉     渡辺蓮夫

なんてロマンチックな体験も嫌いじゃない、けど『花言葉はお前マジ嫌い』とか言う花とか(そんなもんない)いらないよ

さ、『川柳の群像』に載ってる作家の紹介は今回で終わりですが、ここで強く言っておきますが、今まで引用した句は、あくまで東野大八、田辺聖子の両氏が選んだ川柳の中から僕が好きなのを選んだという事、これはあくまで両氏の仕事です、素晴らしい仕事だと思いました。この文章読んでくれてる方、ぜひ買ってください、もう二冊ぐらい買ってください、良い本なんだから。

特に僕は僕と同じく俳人に読んでもらいたいです、どうでしょ?俳句と川柳の境界がどうのこうの言う前に、今まで引用した句、面白くないですか?
僕は面白いものは、俳句も短歌も川柳も、ぜーんぶ読みたい、死ぬまでにこの世の面白いものを一句でも、一首でも多く読みたい、僕は俳句しか作りませんし作れないですが、でもね、ぜーんぶ読みたいのです、勉強になるからなんて言ってる人は野暮です、面白いから、面白いものだけ読みましょ、読むと言う行為はそもそも楽しいものじゃないと、僕は嫌です。来週は『川柳の群像』偏のラスト、句の引用ばかりで申し訳なかったので、素晴らしいと思った文章やエピソードを紹介します。

あとね、最近僕図書館に籠って面白い事企んでますから、ウシシ、お楽しみに。 さぁ~て、時流に乗れないまま、やるぞ