猛烈な二日酔いから『離れ島』

石川美南歌集『離れ島』(本阿弥書店、2011.9)

先日、天野小石さんの『花源』出版パーティーにお邪魔してきました。

わいわいとした、とっても良い会でした、小石さんはセクシーなドレスで、内村さんはナイスなチャイナドレスでした。天為の方は華やかだけど嫌味がなくて気持ちが良い人が多い気がします。

いささか飲み過ぎまして記憶は断片的にしかなく(あんな事やあんな事はとても書けないわ、なんて)、俳句は省略、という事で・・・

なんやかんやで気がつくと・・・村上さんの家に居ました

寝よう、ここは村上さんのお家だけども、もう寝てしまおう
グースカぴーぴー

・・・美空ひばりの歌声が・・・、あ、そうか、村上さん家の目覚まし時計だ、朝・・・だ。

帰らなければと、Oち君と一緒に駅へ向かう、僕はネクタイを外し、落武者のようにふらふらしながら・・・

Oち君がスカイツリーの写真を撮ってる

朝日が眩しいぜ

さぁ、二日酔いからの~

『離れ島』!

という事で、石川美南さんの歌集『離れ島』を読んでいきます、個人的には『裏島』も面白かったですが『離れ島』の方がより麒麟好みです、そんじゃ読んでいきましょう。

島ごとに気候異なり雨傘は役に立つたり立たなかつかり

良いなぁ、そんな旅がしたい、役に立つたり立たなかつかりというフレーズがとても魅力的、ちなみに僕はほとんど役に立ちません

列車から振り落とされた友達はすごい速さで追つてきにけり

キャアー!

人間のふり難儀なり帰りきて睫毛一本一本はづす

石川さんの歌でギョッとするのがとても好き

眉間ぱつくり割れて中から溜め込んでゐた悲しみがしたたり落ちる

ぱつくり、が不気味で魅力的

唇だけまだ生きてゐて千年も昔の愛の言葉を放つ

夢があるようで、いや、やっぱり、怖い、うん、怖い、けれども次の石川さんの歌が、もっともっと読みたい、石川さんの歌はやめられないとまらない

生真面目に夕空を切り取りながらひねくれたくてたまらない窓

たまらない、と表現したところにこぽこぽとあふれだしそうな石川さんの詩情を感じます

うろこ雲のひとつひとつを裏返しこんがり焼いてゆく右手かな

となんだか楽しいような、不思議なような

透明な回転ドアに誰からも記憶されたい私を挟む

非凡なのは、記憶されない、ではなく、記憶されたい、と表現できるところでしょうか

やるせなき思ひは鍋にぶち込んで後はお前に任せたぞ、舌

「面白い」歌も、ただ「面白い」わけじゃない、ちょいとぎゅっとねじれた面白さがある

にらめつこ弱い私はパソコンを前にへなへな笑つてしまふ

へなへなが楽しい

永遠に学生でゐる悪夢にて真夏、中庭の芝刈つてゐる

なるほど、そんな悪夢(不安)もあるんだ、芝刈りの現実感が良いですね

脚長のバッタ男は跳ねながら生き急ぐかなしみを言ひたり

バッタ男となら仲良くやれそう

マウンテンバイクで非常階段を下りていつたよ花の盛りに

いえい♪軽快に跳ねる感じがよく出てます、花が効いているんですかね

お面から僅かに覗く目の部分 軽い会釈をして過ぎ行きぬ

「そこ」を、見てしまうかどうか、僕は見てしまう歌人が好き

子へ孫へ受け継がれたり似合わない帽子を選びとる才能は

残念ながら受け継ぐものは変な癖ぐらいなもんです

羽根ぶとん眉まで上げて眠る夜もわたしの足ははみ出してゐた

眉か、なるほど眉かぁ

二人とも無理をしてをりさみしくて真水を飲んでみた海の魚

この歌好きだなぁ、「無理」はさみしい

捨ててきた左の腕が地を這つて雨の夜ドアをノックする話

ひぃっ怖い、腕も怖いけど、実は「捨てた」の部分がとっても怖い

午前二時のロビーに集ふ六人の五人に影が無かつた話

わぁ、ほとんど!

「発車時刻を五分ほど過ぎてをりますが」車掌は語る悲恋の話

い、今ッスか?

冬の夜のいがぐりあたまの子供らが口を開いて聞き入る話

あ、これなら聞いてみたい、冬と「いがぐり」がなんだかあってます

騙ス気ハナカツタノダと叫びつつ谷底へ落つる男の話

石川さんの歌のフィクションはどれも鮮やかで魅力的、僕の周りの俳人達からも、石川さんの今回の二冊の歌集は非常に注目されています、読みたい読みたい、良いだろ、僕持ってるぜ、みたいな、確かに二冊とも面白いです。
二冊とも、石川さんの作る不思議で邪悪でちょっと怖かったりもする、でも覗かずにはいられない世界へ連れて行ってくれるようなところが魅力的です、僕は俳句でギョッとする事はほとんどありませんが、たまにはギョッとするのも良いもんです、特に俳句の皆様、ぜひこの二冊の歌集を読んでみてくださいませ。

ギョッギョッギョッ ギョッギョッギョッギョッギョッギョッ
↑ギョッって書いてみただけ

村上さん、先日スカイツリーの絵のついたベビースターラーメン(もんじゃ味)を買っていただいてありがとうございました、お母さんにあげなさい(母麒麟がスカイツリーを見たがっているのでお土産にとの意味)、との事でしたが、お腹が空いたので・・・ごめんなさい、食べます!
ではみなさん
バーイ