杉本零句集「零」
平成元年二月二十一日、杉本零遺句文集刊行会発行
先日横浜まで井月についての講演を聞きに行きました。井月さん、近頃人気で有名になったもんで、俳人がわんさか見に来るかと思いきやそうでもなく…。いやいや何も若手ばかりが俳人でないし、芭蕉さんばかりが古典(井月さんは実は最近の作家だけど)でもないだろうと思うわけですよ…、ね、みんな、井上井月、読みましょうよ、興味あるでしょ?ね?
あ、興味無いってか?ニャロウめ、おーし、わかった、今度相子さんがビンタしに行くからな、痛いぞ~。相子さんヤったってください、ボゴンっ!痛いっ、僕じゃなくて…。
で、まぁ良いんですが(?)、せっかく横浜に来たので相子さんと中華を食べに行きました。
相子さんにはよく遊んでいただいていますが、僕らが遊ぶ時は結構熱くてですね、かなり体育会系な俳句飲み会です。澤がー、とか古志がー、うちの師匠がぁー、とかお互い思ってる事をわりとガシガシ言います。井月はぁ~、作品自体が評価される事がぁー、僕はぁ大切だと思うわけですよぉ~、ねぇ相子さん、あ、お代わりお願いします、ぷはぁ~、そうそう、そうでゲスよ、あ、お代わりお願いします、ゴクゴクぷはぁー、なーんで俳人もっと集まらないかなぁ、けしからんですよね?けしからんよ!そうだ、そうだそうだ!もう一杯!ぷはぁ、で、僕は思うわけですよぉ~…。
と、まぁ面白い話してるはずなんだけどほとんど覚えておらず…、でも楽しく熱く盛り上がってたわけですよ。
そんな時に…
カサカサカサカサ…
…!!!
麒麟「オオオオォ…」
相子さん「アアアァ、わわわ…」
Gです、そう、小さめと言えどGが我々のテーブルのすぐ近くを歩いているじゃないですか…。
麒麟「…お店だし、我々も大人だから、言わずにおきましょう」
相子さん「そうだね、我々大人だから」
麒麟「季語だし、悪い奴じゃないかもしれませんよ」
カサカサカサカサ…
悪い奴でした…
お、おのれ、我々の優しさがなぜわからぬ、Gよ、夏の季語Gよ、殺さずにおいてあげるから早くどこかへ行きなさい
カサカサカサカサ!!
麒麟「うををををを~」
相子さん「ギィヤァあああああ、これはさすがに…」
なんと恩知らずなGは僕らのテーブルの上を走り始めたではないですか…。
異変に気づいた店員さんが、取り皿を変えようと僕らのテーブルに来てくれました。
店員さん「ドも、スミマセン」
ひょいとGが乗った皿を(今さら純潔など、という句を思い出した)持って行こうとしたところ、ポテリとGが違う皿に落ちました…。
店員さん「ドも、スミマセン」
何事もなかったかのようにGが乗った皿を持っていき、新しい皿を持ってくれました…、今さら純白など…。
僕と相子さんは、笑いすぎて体をねじりながら汗と涙を拭いてました。
えーと…、料理は美味しかったですよ。
さ、ここまで書いてきて、今日は零さんやります、杉本零です、え?マクラ関係ないって?そりゃ、あなた、関係ないよ
はい、じゃあ読んでいきます、知る人ぞ知る俳人、杉本零さんですよ。
夏痩せて画鋲を拾ふ指の先
刺さっても、痛っと思っても、きっと黙々と拾うのです
よく笑ふ停学の友ソーダ水
少しだけ悪く、寂しくありたいね
職工の弾くギター二百十日無事
あぁやるせないよぉ~♪やるせないんだよぉ~♪
…新宿へ向かう夜行バスの中で、筋肉少女隊の曲を聴きながら泣いたのも若い頃の話、もう、よっぽどヒドイ事が無いと泣いたりしないぜ
鰯雲鬚そつて四時頃出よう
今日は、今日は良い事あるかしらん…。四時頃というヤル気の無さがまた良い。
オレンヂの花火が開く離れ住む
気になってはいるんだよ
天瓜粉子供の頃の夕方よ
子供の頃の夕方は特別です、そう思いつつ気づけばオジサンの孤独まで覚えてしまうのです。
寒燈やホームの端に来てしまひ
なんでもない景色がとんでもなく見えてしまうかどうかが詩人の素質でしょう
思ひ出の真紅な足袋の片つぱう
何があったか聞くのは野暮よ
夏シャツの学生の日を大切に
もう帰れませんから、ね
シグナルが青くて青い春の雪
大好きな句、寂しくて美しくて、こんな景色が見えてしまいたい
知る人ぞ知る、杉本零、句が良すぎてなかなかページが進みません、あぁ、嬉しい。
ではまた来週
ばーい♪