ミスター零②

杉本零句集「零」
平成元年二月二十一日、杉本零遺句文集刊行会発行

二ヶ月に一回ほど、すごく楽しみにしている句会がありまして。

喫茶店で句会をやっているんですが、句会の始まる前に敦姉さんが皆に弁解してました…。

敦姉「きりんのへやで書かれてるのはフィクションよフィクション、あたってるのは一割ぐらいなんだから、もー」

なんだか楽しくなって皆には「ホントホント、全部ホントですよー」とか言っておく。

句会のあとの飲み会で、亜美さんとじゃんじゃん呑みながらはしゃいで…

麒麟「僕はですねェー、郁乎さんのって句が好きなんですよぉ…、あ、僕は次も酔鯨が良いなぁ、これはネェー、土佐のォー…、ねぇねぇ、串が美味しいねェー」

亜美さん「わかる、わかるわよ、わたしもそれが色紙で欲しい、アッちゃん飲みなよー、ほらー」

右隣の平井くんは僕にヒイてて(ごめんね)、優しい岡野さんは僕が酔っぱらっていても許してくれて…。皆素敵な居心地の良い句会であり飲み会なのです。

僕はたくさん呑む人はただそれだけでエライと思うので(土佐の価値観)、亜美さんはとてもエライ俳人だと思います。

嬉しかったのかそのままグガーと僕は寝てしまい…

気が付くとなんとなく家に帰ってきました。あぁ楽しかった、でも次はウコンを飲んでから行かないと…、毎回寝てたらそのうち敦姉に叱られてしまう…。

えーっと、なんだっけ…、あ、杉本零ね、はーい、杉本零さんやるよー、マクラは関係ないよー。

ちなみに杉本零さん、随分呑んだ方らしいです、夢のある話です。

夕立の叩き居るもの見て愉し

…愉しいもん

あぢさゐの玉別々にゆらめきて

一つづつの紫陽花が不思議と大きく美しく見える

寒灯や壁青ければ頬青く

つげ忠男の世界ですな。寂しい男には青がよく似合う。

酔うてやや斜めに彳てりさみだるる

「斜め」に男の孤独を見よ、つげ忠男の世界ですな(再び)。

めんど臭ければ瞑り懐手

色々言ってくれるな、と少し不機嫌な顔をするのです

励まされ甘やかされて朝寝かな

辛いのだ、優しくして欲しい

がつくりとうなだれてゐる案山子かな

青畝だと愉快な案山子になるけれど、零さんが詠むとこうなる、ユーモアのつもりで作ったとしても、やはり悲しい。

落ちてゐる紙に文字ある枯野かな

たいした事なんか書いてないであろう事が「文字」からわかる、こんな物を見ても、零さんは悲しいのだ

帰る家無きにあらねど春寒し

男はみんな、これぐらい寂しい方が良い。遊んだって別に楽しいわけじゃなくても、遊ぶべし、呑むべし、終電逃すべし。

人生は幸福な方が良いに決まっているけど、それでも少し、寂しさを持っていたいものだ、とカレー味のカップヌードルをうまいうまいと食べつつ思うのです。

カップヌードル大盛りを食べて、胃薬を飲んで、それから一人お酒を呑む時、ちょっと寂しくて、少し楽しいのです。

今回も句が良すぎてなかなか進みませんでした、すごいなぁ零さん。

ばーい