(その手、なに…?)
西原 週刊俳句の課題があるとしたらね、たとえばU-streamみたいな新しいツールを入れるとか、考えられるよね。でも、将来も今とあまり変わらず、オールドスクールなネットメディアになっていくのかなと思ってます。読んでるほうに操作的な難しさがなくて、ウェブ上の階層も2つまでくらい。目次と記事ね。そういうシンプルさをずっと維持していくのかなあ、と。
神野 「週刊俳句」が変わらないっていう前提で、「スピカ」もある。
上田 たぶんね、どこかで、「週刊俳句」は紙の雑誌のイメージがあるみたい。目次を作りますからね。「スピカ」は目次がないじゃない?
神野 毎週、どんな記事がupされたのか、逆にアーカイブのかたちで残していこうかな、とは考えているんですが。さかのぼって読みやすいように…。
西原 「詩客」とか「スピカ」とかは体裁が凝っていますが、「週刊俳句」は、いちばん簡単な体裁、っていう感じで続いていくのではないでしょうか。
野口 ふむふむ。
西原 続けていくことでなにか起こるっていうスタンスが当初からのもので、なにを起こすっていうのは、決めない。続けていれば、勝手になにかが起こるという考え方。
上田 天気さんのアイディアで驚いたのは、週イチの定期刊行、ってところ。僕ね、もともと、雑誌つくろうと思ってたんですよ。俳人って、インタビューもただで受けてくれるし、作品も評論も、ただで書いてくれる。だったら、総合誌を自分たちで作っちゃえばいいじゃん、って。それで、ハイクマシーンを雑誌にしようと思ってたら、内部がもめちゃって遅れてた。そしたら、天気さんから「週イチ掲載のウェブマガジンをやりたい」っていう提案があって、ああ、そうか、定期刊行はいいなあと。
神野 ネットに対する、人のニーズってあるじゃないですか。毎日、何度もチェックするわけでもない。
上田 でも、ちょっとしばらくupされないと、見なくなっちゃうしね。
神野 行けばupされてるっていう信頼が、定期刊行には、ある。
西原 「週刊俳句」をやっていくうえで、なにに頭を絞っているかっていうと、毎週1回、確実に更新するということをえんえん続ける。そのためにはどうするか、っていうことですね。
神野 その結果、「面白くしようとしない」っていう答えなんかが出てくる(笑)。
西原 自分で面白い記事を書こうとすると、運営している人間の波が誌面にダイレクトに反映しますよね。俳句に対する熱意が落ちてくると、たちまちつまらない誌面になる。仕組みを作って、運営の手間がかからないようにすれば、品質もある程度維持されるだろうと考えたわけです。それに、負担が少なければ、それだけ長く続くから。低燃費の運営スタイル。
神野 運営している人が4人いれば、ひとりあたり、月に一回のupで済む。
西原 それから、仮に月イチの更新、「月刊俳句」だとしたら、続かないでしょうね。久しぶりの更新だから、いい誌面にしようって、力入っちゃって。
野口 ハードルあがりますよね。
西原 週イチは、ちょうどいい頻度。
上田 週イチでupされるメディアを作ること自体が面白いんだ、ってことが分かったんですよね。はじめは、俳句も載せないし、知り合いに書いてもらう。
西原 「週刊俳句」を始めるころは、ブログが盛り上がってたんですよ。おのおのブログで面白いことを書いてた。
江渡 それをまとめようっていう気持ちがあった。
上田 ブログ本文より、コメント欄で実のある話が展開したり。
神野 俳句関係の文章が載るのって、評論でもなんでも、総合誌以外だと、結社誌か同人誌になるじゃないですか。じゃ、その評論読みたいので結社誌買いたい、って言っても、「会員になって投句しないと買えません」っていうところも多い。結社外のひとには読めない評論って、なんかもったいないと思ってしまう。
上田 身内でなければ読めませんよ、という。
野口 選ばれしものしか読めない、っていうところが、結社の中のひとたちは嬉しいんじゃないですか。
神野 そうだよね。だから「スピカ」は、誰でも読める場所に、面白い記事を置きたいな、っていう、読者としての欲望みたいなところから始めた、ってかんじです。
上田 でも、「スピカ」に出る人って、年齢制限があるのかなって思ってた。
西原 僕もそう。「スピカ」の、なんだっけ、「つくる」? あれを見ていると、若い人しかダメなのかという感じがして。
野口 わたしたちの“知り合い”が、必然的に若くなっちゃうので…。それは「週刊俳句」もそうじゃないですか?コミュニティや世代は、おのずとつくられてくる。
西原 「つくる」は、俳句だけじゃなくて、写真とか、文章がくついているのがいいね。
神野 「スピカ」の「つくる」のページを作ったのは、俳句作品と文章を一緒に読んでみたい、っていう気持ちもありましたね。俳句オンリーの面白さはもちろんなんですけど、俳文とかね、文章と組み合わせたときの面白さを、見てみたかった。
西原 そのほうが読みやすい。
野口 ふらんす堂の2012年の俳句日記は小澤實さん(小澤實の俳句日記)ですけど、俳句だけじゃなくて、日記もついてるんですよね。楽しみです。
上田 運営側は、まず、企画として成立してるかってことを考えるじゃないですか。なら、俳句がつまらなくても、ページが面白ければいいわけですよ。
神野 そうですね、できれば俳句も良くあってほしいですが。(笑)
上田 俳句ってもともと、当たるも八卦当たらぬも八卦、ってところがあるでしょ。
西原 好みもあるしね。
神野 そう。でも、文章や写真を添えることによって、読み物として楽しいってことはありえる。
上田 高い志をもって、ハイテンションでネットをひらくひとって、あんまりいないですから。それに一句を読み切るって、こちらをそうとう高めとかないとできない。
江渡 そうですね。
上田 「つくる」だと、たとえば、山澤香奈さん(「我が家の場合」)。反響大きかったですよね。子どもの写真がよかった。
西原 全部の人のをきちんと読んだわけじゃないけど、あの中だと、谷雄介くんの(「平成俳風鳥獣戯画」)が、群を抜いて面白かった。
野口 面白かったですよね。しっかり書いてくださって、本当に嬉しかったです。
上田 あれでコーナー終ってもいい、くらいの勢いだった。
神野 そうですね。結局、いい句を作るかどうかってところは、執筆してくださる方のタスクなので。わたしたち運営側は、はじめの相談のときに、企画は一緒に考えるんですけど、出していただく俳句の出来は、本人にどうにかしてもらうしかない。そこは、受けてくださった作家の方の…
上田 プライドをかけて。
神野 そう、プライドの問題なので。
(次回は、西原天気さんの句集『けむり』について伺います)