2016年6月4日

ライバルに会ひ夏風邪を移された

6月4日

お粥を炊くのにハマった時期がある。風邪をこじらせて喉を痛め、2週間ほど思わず笑ってしまうほどがらがらの声しか出なくなったのだ。わたしの声を聞いて驚く友人たちの顔を見るのはまるで妖怪にでもなったような気がしてたのしい。折角なので中森明菜やニャンちゅうのモノマネに挑戦したけれどすぐに飽きる。何よりも固形のものを飲み下すのに一苦労だったので、わたしは喉を治すのに専念しようと決めた。Twitterで「粥百選」という本を教えてもらい、その本を片手にしばらく粥を炊いた。刻んだ搾菜、ほぐした鳥ささみ、海老、レタス、カリカリに焼いたお揚げ、大根おろし、しらす、甘辛く炒めたカブの葉、温泉卵、角煮のように味をつけた豚バラ肉、たたいた梅肉、かいわれ、板のりをくつくつ煮た簡易佃煮、お粥の上に乗せるものもいくらでも思いついてたのしい。お粥を炊くときはなるべくかき混ぜたりしないほうがいいらしい。いままでは冷や飯を伸ばして煮てばかりで、生米から作るちゃんとしたお粥の作り方を知らなかったので勉強になる。丁寧に炊いたお粥はふわふわで甘く、口に入れた次の瞬間に口からなくなってしまう。雲の峰はよく綿飴に例えられたりするけれど、案外わたしの作ったお粥みたいな味がするんじゃないか。
結局喉は案外すぐよくなり、噛みごたえのない食事に嫌気がさしてお粥生活はあっさり終わった。風邪を引いていなくてもたまにお粥が無性に食べたくなるときがあって、なんとなく、それは自分のことを甘やかしたい時な気がする。