2017年4月8日

星の殻積みて百年てふ高さ

小学生で俳句を読みはじめたが、もちろん他の分野の読書もしていないわけではなかった。
世界文学を子供向けに翻案した全集ものを読んだのが、記憶のなかでは最初のまとまった読書体験であり、なかでは『あしながおじさん』が好きで、主人公のジュディは自分にとって理想の女性だと思っていた。
高学年になると芥川龍之介の説話ものが好きになって文庫を買い集めたりした。漱石の『夢十夜』をはじめて読んだのもその時期である。
私はこれを漱石が実際に見た夢をそのまま記録したものと考え、自分も夢をいちいち記録しておけば、このような作品になるのではないかと思ったこともある。幻想的な文学作品に触れたのはこれが最初だったと思う。
一昨年、作曲家の今井飛鳥氏、シンガーソングライターの大野円雅氏と三人で「汀の火」というバンドを結成し、文学作品を歌曲と朗読に翻案する活動を行なうようになった。そこで二作目にとりあげたのがこの『夢十夜』であった。翻案作業を行いつつ、あらためてその内容が、自分の表現したい世界と接続していることを確認することができた。
「第一夜」における死と時間の扱い方は小学生の私に強い恐怖と魅惑を感じさせ、今でもその鳥肌が立つような感覚を忘れられずにいる。