2017年4月12日

けむりまつすぐぬけがらもやす春の空

両親が学費を出すことを了承してくれたので、5年生になることを前提とした大学4年生となり、さすがに心を入れ替えて勉学に励むことにした。と言っても、出席して講義をきちんと聞くという当たり前のことをやろうとしただけである。しかし、真面目に聴くとたいていの講義は面白かった。
その当時パソコンというとまだまだ一部のマニア向けと言うイメージがあった気がするが、私は興味をひかれ、あやしげなメーカーのパソコンを購入した。たまに秋葉原に行って出自不明の中古パーツやソフトェアを購入したが、半分くらいは相性その他の問題で使えなかった。世間では「マルチメディア」という語が使われはじめ、テキスト、音声、画像などをすべてデジタル化し、データとして一元的に扱い、通信ネットワークを介して交換、共有することが提唱されていた。今ではインターネットを介してあたりまえに行なわれていることが、当時は夢物語のように語られたのである。ただ、コストパフォーマンスが劇的に改善されていくにつれ、夢が自動的に現実になっていくような感覚があった。この分野では量の変化が質の変化に直結するのであり、世界の仕組みが次々とつくり替えられていくことを体感しながら、さらにその先の未来を想像してみることは非常な興奮をもたらした。
就職活動をやり直すにあたって私は迷いなくIT関連の企業を志望した。今にして振り返ると、当時夢想していた以上に大きく複雑に世界は変化したようであるが、ネガティブな面については想像できていなかった。