2017年4月19日

崩壊を巻き戻す夜の八重桜

「―俳句空間―豈weekly」が終刊したのち、2010年末に私は再就職したが、半年あまりでふたたび退職してしまった。そのわずかな在職期間である2011年の3月に東日本大震災があった。
ふたたび無職になった私は、さまざまな事情から一人で生活することになった。自分の役割がなにひとつ社会に存在しないという思いが、ボディブローのようにすこしずつ自信を奪っていった。俳句も最終的には支えにならず、俳人としての自信や意欲も喪っていった。自分自身に興味がなくなり、自分に捨てられた自分はただ部屋のなかにころがっているだけの物体となり、少しずつ貯金も減り、これがなくなった頃に死ぬのだろうなどと思うこともあった。
ふたたび妻と同居するようになったが、就職するための第一歩を踏み出すことがなかなか出来なかった。職についている事に慣れると無職になることが怖いが、無職であることに慣れると働くのが怖くなる。
そんなとき妻から指摘され、私はとりあえず体重を減らそうと決意した。最初のうち少しの運動や節食で数kg程度は比較的簡単に落とすことができたが、だんだんと落ちにくくなった。そこから気持ちに熱が入ってきて、筋トレと食事制限に加えてランや水泳などの有酸素運動も行ない、最終的には15kg近く体重を落とすことができた。一見なんでもないようなことであっても、目標を立て、それが達成できたということが自信の回復につながったのである。そして三度目の就職をしたのが2013年の春であった。しかし、そんな私から「俳句」はすっぽりと抜け落ちていた。