2017年7月4日

古書店の値段は手書きマフラー巻く

池田由樹さんと初めて会ったのは、東京の神保町だった。池田由樹さんは私と同じ俳句甲子園のOGで、私よりひとつ学年が上のお姉さんで、Twitterで知り合った。20歳の頃、東京で俳句の賞の選考会があり、その次の日に会う約束をした。池田由樹さんは、私のリクエストで神保町に来てくれた。神保町の駅の階段を上がって地上に出ると右側に自動販売機があって、池田由樹さんは、左側のレンガの裏で待っていた。声が小鳥のように高くて、かわいらしいお姉さんだった。
喫茶店で注文したカレーを待つあいだ、お互いに明朝体のレタリングが得意だということがわかり、名刺代わりに自分の名前を明朝体で書いて交換した。そのあとは、古書店巡りをして、雑貨屋さんや大きな本屋にも行った。池田由樹さんとは、初対面とは思えないほど、仲良くなれた。

『森崎書店の日々』(2010, 原作 八木沢里志,脚本・監督 日向朝子)は、仕事と恋人を失った女性が叔父の営む古書店を手伝うため、神保町で暮らす。主人公の女性が初めて神保町の駅に着いたとき、あのときと同じ自動販売機があった。

俳句の賞は受賞できなくて、前日の夜は東横インでチョコミント味のモナカのアイスを食べながら泣いたけど、神保町と池田由樹さんに救われて、前に進むことができたと思う。