2017年8月6日

はつなつの走獣として零す水

―――山口優夢さんインタビュー 前編

第56回角川俳句賞を受賞なさったのは、もう6年前なのですね。
あらためて「投函」50句を読み返すと、受賞をしっかりと見据える堅実なしなやかさもありつつ、自分らしさというものを譲らない強さがあり、山口優夢がくっきりとそこにいるなあと感じました。

ありがとうございます。

当時を振り返り、今だから話せる秘話、教えてください!

うーん。「投函」というタイトルは、「投函のたびにポストへ光入る」という50句の中の1句から取っているんだけど、なぜこの句から取ったかというと、それはこの句が無季の俳句だからなんですね。と言うのも、他49句が全部季語が入っているから、選考委員に「季語を入れるのを忘れたのでは」と思われる恐れがあるかなあと思い、「季語がないのはわざとなんだ」ということを強調するためにあえてこの句からタイトルをとった。こんな話、もしかしたら以前にもしてるかもしれないけど。

http://blog.goo.ne.jp/y-yuumu/e/7f5762cd1de4faaad0c6d85439f2593e
これが2007年の記事ですね。賞に応募しはじめたきっかけはなんですか?

よくまあこんな古い記事を見つけて来たね。応募し始めたのは、周りで神野紗希さんとか佐藤文香とか谷雄介とかが角川賞に応募していたからでしょう。たしか。流されやすい性格なんで。それに賞を取れば自慢にもなるし。あとは、記事にもあるように角川俳句賞は選考委員の座談会が面白かったから、その俎上に自分の俳句も載せてもらえるならうれしいなと思ってたんじゃないですか。
今にして思えば、1年に1回、50句をまとめる機会があるというのを、最大限利用していたような気がします。1年分の成果を発表する、みたいな気分で。そういう意味では、応募し始めたときにはなかったと思うけど、週刊俳句で角川俳句賞の落選展が始まったのは応募のモチベーションの一つになったと思います。落ちてもまとまった作品として人の目に触れる機会があるという感じで。まあ、落選展自体に毀誉褒貶はあったし、選考委員から見たら「ちょっと…」っていうのも分からないではないですが。

 
(望月周さんとダブル受賞となった第56回角川俳句賞。短歌賞は大森静佳さん。)

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山口優夢 プロフィール
1985 年、東京生まれ。第六回俳句甲子園団体優勝・個人最優秀賞。第二回龍谷大学青春俳句大賞大学生部門最優秀賞。第四回鬼貫青春俳句大賞優秀賞。ブログ「そらはなないろ」や週刊俳句に句集評などを掲載。2008年12月より銀化所属。アンソロジー『新撰21』(2009)に参加、『新撰21』の自分以外の20人を評した評論集『抒情なき世代』(邑書林)。2010年第56回角川俳句賞受賞。句集『残像』(角川学芸出版)。読売KODOMO新聞のツイッターでときどき俳句もつぶやいている。

◆次回は、山口優夢さんインタビュー 後編

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