2011年8月6日

昼寝覚わたしも轆轤首でした  

 

ろくろ首は現在でも説明なしに通じるお化けのひとつだろう。夜中、眠っている女性の首がするすると伸びはじめ、やがて柱にのぼったり、欄間に首をかけたりするという。「轆轤」は井戸についた滑車のことで、上下する井戸の動きになぞらえた名らしい。

 

もともとのろくろ首は、体から頭が抜けて飛び回る「抜け首」型で語られることが多かったようだ。中国の南方には「飛頭蛮」とか「落頭民」とかいう、体から頭が離れる一族がいたと考えられていたらしく、三国時代、呉の朱桓の下女がそうだったと伝わる。夜中に頭が離れるのは「離魂病」ともいい、魂が夜中に抜け出てしまう病気だ、と説明されていた。こうした考え方はアジア一般に存在し、ペナンガランやポンティアナといった「首だけで飛ぶ女性」の怪物は広く語られている。ちなみに、ろくろ首たちが女性として語られることが多いのは、ある意味で注目していいだろう。

 

「抜け首」(飛頭)が「ろくろ首」になったのは、要するに絵で魂が離れた状態を表すために、飛ぶ頭と体とを筋でつないでいた描いたことが、だんだん筋が太くなって首自体が伸びた姿になったということらしい。現在の「ろくろ首」は、絵から誕生した妖怪なのだ。

 

参考.横山泰子「近世文化における轆轤首の形状について」『日本妖怪学大全』(小学館、2003)