2012年9月5日

今る理に酢橘が届くtwitter

招待チームである開成高校・松山東高校の面々とともに会場に着くと、すでに『俳句in沖縄』は始まっていた。
沖縄の高校生たちが、俳句ディベートを繰り広げている。到着したときに、壇上で戦っていたのは次の二句。

雲の峰ωの笑うノートかな  仲里栄樹(浦添高校/チーム「THEガンダーラ」)

Eメール入道雲の影の中  金城幸作(泊高校/春秋豊作チーム)

審査員は3人。論駁点(討論の巧さ)、鑑賞点(俳句作品への理解)、創作点(俳句の出来)を点数化して、対戦2チームの句のどちらかに軍配をあげる。審査員の旗を二本以上とったチームが一本先取。これが俳句ディベートだ。私は、この審査員の一人として、今回沖縄に呼んでもらったわけ。

仲里さんの句、ω(オメガ)はメールなどに出てくる顔文字で、口の部分を表すのによく使われる。
例:○(´・ω・`)ショボーン
ノートに顔文字風のイラストが書いてあって、窓の外には雲の峰がそびえているのだろう。絵ではなく文字しか送受信できないインターネットの世界で表情を表すための顔文字が、逆にリアルの世界を浸食しているところが面白い。
金城さんの句は、送信したEメールがいま、入道雲の中を突き抜けて誰かのもとへ届くのだ、という感覚だろうか。期せずして、Eメール関係の俳句の対決。虚構の世界だと思われているインターネットの空間が、実は私たちのリアルの生活の中に実際にうごめいていて、ノートを一枚めくるとそこに見つけられるし、入道雲の影を掠めたりもする、そんな現代の真実が、どちらの句にもある。

数年前に「インターネットどこへも行けぬ晩夏かな」という句を作ったことがあるけれど、彼らの句に比べると、私の句はまだまだ、世の中に流通している「インターネットとは…」という言説にとらわれていたのだなあ。