神野 今日は、女性四人組の俳句のユニット、hi→のメンバーから、西丘伊吹さんと楢山恵都さんにいらしていただきました。「よみあう」、初・女子会です。
野口 おおお、そっか。
神野 店も、女子会コースにしてみました。
西丘 揚げパスタ美味しいです(笑)
神野 それでは、まず、なぜ俳句をはじめたのか、聞いてみようかな。西丘伊吹ちゃんは、慶応大学の俳句会に所属していたときから、学生俳句会のつながりで、私もる理ちゃんもお付き合いさせてもらってました。
西丘 俳句を始めたのは、大学生になってから。中学三年生のころ、短歌に興味があって。書店で売ってるような、俵万智さんとか面白いなと。で、地域の短歌賞に応募して入選したりして。
野口 入選した歌、覚えてますか?
西丘 覚えてますね(笑)
神野 教えて教えて。
西丘 いや・・・(照)それは青春ぽい感じだったんですけど、誰にも教わらず、自分でノートに書いて。
神野 俵さんの歌で好きな歌はありますか。
西丘 内容が好きというより、言葉のリズムが心地よかったです。三十一文字にこのリズム感でのせることができるっていう、そのセンスに惹かれていました。響きが楽しいな、ことばをこんなふうに操ってみたいな、って。それで、大学に進学して短歌会を探したんですけど、私の大学には短歌会はなくて、俳句会しかなくて。とりあえず覗くだけ覗いてみようと行ってみたら、部室で有無をいわせず名前を書かせられ(笑)
野口 怖い(笑)
西丘 自動的に入部してました(笑)でも、結果的によかったかな。短歌は感情を書いてると三十一文字でも足りないなって感じだったんですけど、俳句は、感情を書かないでも、ものとか情景なりを書いて、あとは読み手にまかせる。半分こ、みたいな感じが、新鮮でした。
神野 マンボウみたいな!
西丘 そ、そうですね(苦笑)それがとても清潔な感じがして。
神野 今は短歌は?
西丘 もうやらなくなりましたね。両立は難しいです。自分の精神性も、俳句よりにシフトしてきて。だらだら感情を述べたくないなって。今は俳句です。
楢山 私は、大学に入って、文芸サークルでずっと小説を書いていました。昔から、ひとりで書いてはいたんですけど・・・。
神野 そのころは、俳句は・・・
楢山 ほぼ、まったく。授業でやったのや、あとは幼いとき、祖父に遊びで教えてもらったくらいです。今使っている歳時記は祖父の遺したもの。
神野 どんな小説が好きだったんですか。
楢山 小さい頃は、児童文学が好きでした。欧米の翻訳小説、エリナー・ファージョンとか、ミヒャエル・エンデとか。親が読書好きだったので、家に本はありました。大人になってからはボリス・ヴィアン、ブローティガン、カポーティー、トーベ・ヤンソン、石田千、幸田文をよく読みます。
神野 学校の授業で出てくる俳句の印象は、覚えていますか?
楢山 短歌のほうが記憶にあります。俳句だと、松尾芭蕉、とか・・・。
西丘 現代俳句の印象はあまりないですね。大学時代、教育実習でたまたま俳句の授業を担当したんですよ。そのときは、黛まどかとか、高柳重信の「君嫁けり遠き一つの訃に似たり」とか教科書に載っていて、それはそれで「中学三年生で分かるのかなあ」と思いました(笑)
神野 たしかに(笑)
楢山 国語でおばあちゃん先生がいて。私、生意気な中学生だったので、「俳句は字数が少ないから簡単なんじゃないの」って言ったんですよ。そしたら「あなた全然わかってないわね」って。いま、その先生の言うとおりだったなって(笑)
神野 その先生も、こんなに早く分かってくれるとは、思ってなかっただろうね(笑)
西丘 教育実習のときの教科書に載っていた黛まどかさんの「別なひと見てゐる彼のサングラス」が、女性が「君」のことを詠んでる恋の句でした。中学三年生の子たちに、「君」が女性ですか男性ですか、って聞いたら、それが男性だってことすら分かってなくて(笑)
野口 かわいい(笑)
楢山 あ、それで、俳句を始めた理由でしたよね。大学二年のとき、所属していた国文科で、「万葉旅行」っていう、奈良に旅行したんですね。紅葉の時期で楽しくて。そこで伊吹ちゃんと知りあって、「伊吹ちゃん、サークル何やってるの?」って聞いたら「俳句だ」っていうから(笑)
神野 どう思った?
楢山 同年代の女の子が、俳句なんてやるの?!って思って。
西丘 もっともです。
楢山 で、俄然興味がわいてきて。今思えば、伊吹ちゃんが旅行中ずっと手帖にメモしてたのは、あれ、俳句作ってたんだなあって。で、俳句、やってみたいなあ、って。で、伊吹ちゃんに、やりたいんだ、って言って。
野口 ストレートだね!
楢山 仲間と出してた小説の同人誌に、あるとき、伊吹ちゃんを誘ったんですね。「俳句を載せてほしいな」ってことで。で、雑誌を出したら、読んでくれた人のなかに「私も実は俳句をやりたかったんだ」って人がいて。それが、今、「hi→」を一緒にやっている衣衣さんと藍子さんでした。じゃあ、四人で、まず初めての句会をやってみようってなりました。一応は、五七五も知ってるし、季語も知ってるし、「かな」「けり」とか切れがあるのも知識としては知ってるけど、作ったことはない。そういう人たちと、“はじめの二歩め”をやってみよう、って。
神野 “はじめの二歩め”って、面白いね。
楢山 それが「hi→」の始まりです。去年の今頃・・・そこから俳句を続けてます。
西丘 去年の五月ごろに、初めて一緒に句会をして。そしたら、衣衣さんが、zine
っていう、同人誌や新聞よりも薄い、流通にはのらない紙の読みもの、ミニコミ誌を俳句で作りたいっておっしゃって。そしたら、なぜか藍子さんが、「わたし、カレンダー作りたい」って言い出して(笑)
楢山 四者四様が融合して「hi→」が出来た感じです。
神野 zineってジャンル、まだよくイメージがわかないんだけど・・・
楢山 イメージしていただきたいのは、授業中に、むかし女子たちが廻してた、手紙のようなものです。自分の好きなことを、紙でちょっとだけ、誰かに渡す。
西丘 薄い紙物、っていう(笑)これがzineっていう形式があるわけではないです。自由。
神野 なるほど!「hi→」なんだけど、どっちを飾るか迷うんだよね(笑)表に俳句が書いてあって、裏はカレンダーだから、カレンダー飾ると俳句が読めないし・・・。
楢山 あ、気付かなかった・・・。
西丘 ぜひ、俳句を読んだあと、カレンダーとして使ってください(笑)
(hi→のカレンダー面の画像 ↑ )
神野 つまり「hi→」は、四人のユニット名でもあり、雑誌(zine)の名前でもある、と。「hi→」の命名には、なにか意味があるの。
楢山 「hi→」のやじるしは、変奏を表してます。初めての句会のときに面白いと思ったのが、清記用紙に清書することでした。誰が何を詠んだか分からなくなるのが、すごく新鮮だったんですね。作者が分からないのに、いろんなことが読みとれる。だから、「hi→」は、俳句からインスピレーションを得て、詩とか小説とかデザインとかレシピとか、いろんなことを俳句から変奏していこうってことをテーマにしています。
西丘 私自身、意外だったのが、俳句初心者の三人が、句会がすごく楽しいっていうんですね。だから、年に四回「hi→」を発行するときも、必ず吟行をするようにしています。句会を一番大切にしているっていうところが軸ですね。何かイベントをやるとしても、句会とセットにして、今日の出来事を俳句に置き変えていくっていう作業を、「hi→」としては続けていきたいです。
神野 句会や俳句というものも、ある意味、日常の変奏である、という。
楢山 まさに。
神野 「hi→」は、今はどんな活動をしているの?
楢山 俳句と関わりの深い四季を大切に、季刊としてzine「hi→」を年に四回発行するのと同時に、イベントをどんどんやっていこうと思っています。たとえばこの前の夏に、アサヒビール主催の「アサヒアートスクエア」というイベントがあって、「隅田川で遊ぼう」っていうコンセプトだったんですけど、そこで「初めての句会」、私たちがやって楽しかった“二歩めの句会”をみなさんにも体験していただきたい、ということで、浅草のほおずき市のときに、吟行をして句会をやりました。
西丘 来月予定しているのは、書道と句会っていうイベントです。午前中には、季語をメインに、書を書いてみる。で、午後は、また別立てで句会をしてみる、という二本立てです。最後に、自分の句を書道で書いてみて、終わりという。俳句とほかのジャンルをつないでいくような活動を、四人ではやれたらいいなと思っています。ファッションでも、音楽でも、ダンスでも、絵でも、写真でも。
神野 これから、これもやりたいってことはありますか。
楢山 文字を楽しみたいですね。私、清記用紙が衝撃だったんですね。自分が作ったものを、他の人が書くっていうこと。自分の作品が、他の人の書体で現れるっていうのが衝撃的でした。だから、文字が楽しいので、出来上がった俳句をオブジェにしちゃおう、ってことも、雑談レベルで喋ってます。俳句をローマ字にして、三行くらいにレイアウトして、オブジェにする。
神野 モノにしちゃうの?
西丘 そう。試作を作ってみたんです。ぱっと見、一瞬なんだか分からないんだけど、よく見れば俳句、っていう。それから、俳句を、いろんな外国語に翻訳するのもしてみたい。
楢山 変奏のバリエーションを増やして、いろいろやっていきたいです。
神野 次の「hi→」は、もうすぐ出るんじゃない?
西丘 10月1日に、秋号が出ます。
楢山 委託販売で置かせてもらっているお店一覧もHPにありますし、定期購読や、一号だけ欲しいという方も、サイトを通してお問い合わせいただければ対応します。
野口 お問い合わせはこちら(http://www.hi-ku.net/)まで!
神野 テレビみたい(笑)
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