獣骨を磨きて虫の籠とせる   日原傳

「虫の籠」ならば肋骨あたりが手頃だろうか。そして、きっと小さな獣の骨だ。
原始的で少し野蛮とも言える行為だが、涼しげでおしゃれでもある。
「磨」いてやるところに、獣と虫、それを愛でる人への慈しみが感じられ、
生きている「虫」の声が、生きていた「獣」の中から聞こえる仕掛けも巧みだ。
「獣骨」のかたちや生きている獣を思い浮かべさせると同時に、
よくあるふつうの虫籠のかたちに、なにかの獣を立ちあがらせる想像をもさせる一句。

家族で俳句「中国」(『俳句αあるふぁ 8-9月号』毎日新聞社、2014)より。