花曇都電はときどきあの世へ行く   林雅樹

《「どき」は「くの字点(濁点)」》
「都電」のノスタルジックな雰囲気は「花曇」ならなおのこと。
中七・下五の字余りのリズムが、この世と「あの世」の境界をぼやかしている。
はなやかな桜とどんよりとした雲の中を小さな都電がゆく景は、妖しく美しい。

「大人は判つてくれない」(『俳コレ』邑書林、2011)より。