エリックのばかばかばかと桜降る   太田うさぎ

「エリック」。誰だ、エリック。
誰かわからないほうがいいのだ、わからないからこそいいのだ、エリック。
そして、なんならこのエリックはばかではない。
「ばか」も「ばかばかばか」と言われればたいしたものだ。
ぽかぽかぽかと胸を叩かれてもいるだろう。無論、ぼこぼこに殴られているのではなく。
エリック。この句をもって、エリックは桜のように優しい色男の代名詞となった。

「蓬莱一丁目」(『俳コレ』邑書林、2011)より。