どの子にも涼しく風の吹く日かな   飯田龍太

なんとも爽やかで優しい視線のある句だ。
吹きにけり、と流しても良さそうなところを「吹く日かな」ととめている。
涼しそうにきらきらとした顔を見せる「子」でもなく、吹き抜ける「風」でもなく、
そういう「日」にこそ焦点を置き詠んでいるのだ。
だからこそ、子どもたちも涼しさも風もこういう一日も、すべて今は一回性のものであり、
それを味わう喜びと愛おしさが透けてみえてくる。

『忘音』(牧羊社、1968)より。