夏の海にほふや賊に木の義眼   藤田哲史

「木の義眼」は何も映さない。ただただ、空間を埋める存在だ。
「木」の質感が、温かだけれども軽くて少しささくれ立っているような、
自分の身体と同化するのではなく共存するものであることを意識させる。
海の匂いがしているはずなのに、森の木々の匂いまで感じてしまう。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』には、木の義眼をした海賊が出てきて、
戦いの途中でその義眼がコロコロ転げていくのを追いかけてそっと嵌めるシーンがある。
それはとてもコミカルに描かれるのだが、実際には笑えないことだろうと思う。

「俳句結社歳時記 澤」(『俳句 7月号』角川学芸出版、2011)より。

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