もう死んでしまった畳と、そこにあふれる黴の生命力。
「黴疊」という字の見た目の風格にまず圧倒され、一句のムードを視覚的に感じることができる。
「靑けむり」というのは、黴の胞子のことであろう。決して気持ちがいいものではない。
しかし、「靑けむり」と書かれることによって、それは詩となり、
このような気持ちがいいものではないことをも含めた世界を愛しはじめることとなるのだ。
畳を踏み抜くという行為それ自体が、現実と非現実を乗り越えてしまうような行為とも言える。
文体としても、中七のさらに途中で切ることによって、劇的な場面展開となり、
我々はたちまち、青けむりにつつまれ、青けむりが静まるとき、きっと新たな世界を見ることとなるのだ。
「秋近し」(『俳句 7月号』角川学芸出版、2011)より。