蜂鳥の残せしものに花の揺れ   長谷川裕

蜂鳥の去ったあとに花が揺れている。なんとも静謐で爽やかな景だ。
蜂鳥は、花の蜜を主食とし、蜂のような羽音を持つ鳥である。
蜂鳥がいるときは、騒がしく、花にとまったりはなれたりと、もっと激しく揺れてていたことだろう。
蜂ではなく、「蜂鳥」の重さや手触りだからこそ、去ったあとの喪失感が際立つのだ。
この包括的な読みぶりは、ただ花が揺れているのを見ても蜂鳥を思い起こさせるようだ。
立つ鳥跡を濁さず、ということわざもあるが、永遠のように残るこの花の揺れが、切ない。

『塵風 No.3』(塵風俳句会、2011.2)より。

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