あくびから何か生まれて葛の花   宮﨑莉々香

掲句からまず、空也上人の像を思い浮かべた。それは漫画の世界のようで楽しい。
念仏を唱える口から六体の阿弥陀が現れたという伝承を持つ彼の姿は、なんだか呆けていて、
〈あくび〉の姿とも見えてくるだろう。それでいてなにかを生みだしている姿でもある。
〈あくび〉という眠さや退屈さなどからの呼吸動作から、〈何か生まれる〉という意外性。
それはただの意外性ではなく、なにか悟りでもあり、ものを生みだす人へのエールでもあるだろう。
大きな葛の葉の間にひっそりと咲く〈葛の花〉の香りが余韻となって残る。

『群青 2月号』(群青俳句会、2016)より。

第145回勉強会【私の思う現代の俳句150句】