鳥の巣のいつかこはれるやう作る   篠塚雅世

〈鳥の巣〉は鳥の家ではない。卵を産み雛を育てる場所で、巣立てばもう必要がないものだ。
〈いつかこはれる〉ものを〈作る〉ということは、虚しいことなのだろうか。
考えれば考えるほど、その行為はとても尊く愛おしむべきことなのではないかと思えてくる。
鳥が巣を作るときの心持ちという着眼点も面白いだけではない説得力がある。
言葉をそうっと重ねていくような文体が、より鳥の気持ちに寄り添っているようだ。

『猫の町』(角川文化振興財団、2015)より。