石としてきらめく墓や冬椿   岸本尚毅

「墓としてきらめく石や」では、そういう運命の石もあるという発見に過ぎないが、
掲句は、〈墓〉にまつわる情報や想念をそぎ落としてなお〈墓〉を詠んでいる。
そこに眠る者や、参る人の心を映して〈きらめく〉のではないところにこそ、
〈墓〉そのものへの愛すら感じられるだろう。
墓のきらめきを見守るような〈冬椿〉の取り合わせもあざやかな一句。

「何か」(『俳句 3月号』角川文化振興財団、2017)より。