夜仕事を最も騒ぐ炭酸水  野口る理

る理の世界では、物が自然に声を発している。ただの擬人化だと言ってしまえばそれまでなのだが、その描かれ方があまりにも自然で、声を発したところに驚きはない。そう言えば騒いでるなと気付く彼女が彼女の物語に読者を誘う。
パンジーのざわめきを聴く煙かな  「花のころ」
静まった夜に騒ぐ炭酸水に、人気のない場所でざわめくパンジー。それらが声を発する時にる理は耳を澄ませる。決して意味のある言葉を発しているわけではないが、無視せず注目せず自然なこととして受け入れるその姿勢は世界に対して優しい。
2016年9月1日「九月」より。